はじめに
IPAのプロジェクトマネージャー試験(PM)に2021年10月に合格しました。
2020年10月に応用情報技術者試験に合格しているため、午前Ⅰ試験を受験免除したうえで試験に臨みました。(午前Ⅰ試験の免除については後述)
これから受験する方に向けて、効率的に対策するためのおすすめの勉強方法を解説します!
おすすめの勉強方法をまとめると・・・ 【午前Ⅰ】 ①免除を受けるため、あらかじめ応用情報技術者試験に合格する 【午前Ⅱ】 ②参考書の午前Ⅱ範囲を1周する ③プロジェクトマネージャー試験ドットコムで過去問を繰り返し解く 【午後Ⅰ】 ④参考書の午後Ⅰ範囲を1周する 【午後Ⅱ】 ⑤参考書の午後Ⅱ範囲を確認し、自分の対策答案を作成する
プロジェクトマネージャー試験とは
プロジェクトマネージャー試験の位置付け
プロジェクトマネージャー試験とは、情報処理推進機構(IPA)が主催する情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験の一種です。1年間に1回(秋期10月)に実施されます。
応用情報技術者試験の上位に位置する高度情報処理技術者試験のうちの1つであり、システム開発におけるプロジェクトマネージャーとしての業務に対する理解が求められます。
受験者の対象者像として、IPAのHPには「高度IT人材として確立した専門分野をもち、システム開発プロジェクトの目標の達成に向けて、責任をもって、プロジェクト全体計画(プロジェクト計画及びプロジェクトマネジメント計画)を作成し、必要となる要員や資源を確保し、予算、スケジュール、品質などの計画に基づいてプロジェクトを実行・管理する者」とあります。簡単に言えば、プロジェクトマネージャーができる人、ということですね。
私が受験会場で感じた印象としては、30代以上の社会人の方が多いということです。(応用情報技術者試験の受験会場では学生・若手社会人の方が多い印象でした。)
試験の構成
試験は「午前Ⅰ」「午前Ⅱ」「午後Ⅰ」「午後Ⅱ」の4つに分かれており、1日をかけて実施されます。
「午前Ⅰ」「午前Ⅱ」「午後Ⅰ」は6割以上の正答率、「午後Ⅱ」は論述が評価ランクA(合格水準にある)と認められれば合格となります。
また、それぞれの試験の合格基準を満たしていないと後続の試験の採点はされません。例えば「午前Ⅱ」の試験で6割未満だと、「午後Ⅰ」「午後Ⅱ」の試験の採点はされません。
午前Ⅰ | 午前Ⅱ | 午後Ⅰ | 午後Ⅱ | |
---|---|---|---|---|
試験時間 | 9:30〜10:20 (50分) | 10:50〜11:30 (40分) | 12:30〜14:00 (90分) | 14:30〜16:30 (120分) |
出題形式 | 多肢選択式 (四肢択一) | 多肢選択式 (四肢択一) | 記述式 | 論述式 |
出題数 解答数 | 出題数:30問 解答数:30問 | 出題数:25問 解答数:25問 | 出題数:3問 解答数:2問 | 出題数:2問 解答数:1問 |
合格基準 | 6割 | 6割 | 6割 | ランクA |
応用情報技術者試験の合格(もしくは高度情報処理技術者試験・支援士試験の午前Ⅰ試験を6割以上)していると午前Ⅰ試験が免除となります。
午前Ⅰ試験がプロジェクトマネージャーに関わるものだけでなく、システム開発全般の知識を問うものなのに対して、それ以外の午前Ⅱ、午後Ⅰ、午後Ⅱ試験はプロジェクトマネージャーに関する知識を問います。
範囲が異なる試験の対策を両立させるのは大変であるため、応用情報技術者試験を合格していない方は、まず応用情報技術者試験に挑戦することをおすすめします。
試験の範囲
プロジェクトマネージャー試験の試験範囲は多岐にわたるため、ここでは概略を記載します。詳しい試験範囲についてはIPAの公式HPをご覧ください。
午前Ⅰは「テクノロジ系」「マネジメント系」「ストラテジ系」の3分野に分かれており、システム開発全般の知識を問われます。
午前Ⅱも午前Ⅰと同じように「テクノロジ系」「マネジメント系」「ストラテジ系」の3分野から出題されますが、「マネジメント系」のプロジェクトマネジメントに関する出題が最も多いです。
午後Ⅰはプロジェクトマネジメントに関する記述式問題が3題出題され、2題を選択して回答します。
午後Ⅱはプロジェクトマネジメントに関する論述式問題が2題出題され、1題を選択し回答します。
おすすめの勉強方法
プロジェクトマネージャー試験を合格するために鬼門となるのは「午後Ⅱ」試験です。「午後Ⅱ」試験では約2,800字の論述を120分で完成させなければなりません。現代において日常生活で長文を手書きしている人はほとんどいないでしょうから、手書きすることに慣れる必要があります。
試験対策は「午後Ⅱ」をメインに進めましょう。
おすすめの勉強方法まとめ 【午前Ⅰ】 ①免除を受けるため、あらかじめ応用情報技術者試験に合格する 【午前Ⅱ】 ②参考書の午前Ⅱ範囲を1周する ③プロジェクトマネージャー試験ドットコムで過去問を繰り返し解く 【午後Ⅰ】 ④参考書の午後Ⅰ範囲を1周する 【午後Ⅱ】 ⑤参考書の午後Ⅱ範囲を確認し、自分の対策答案を作成する
午前Ⅰ
①免除を受けるため、あらかじめ応用情報技術者試験に合格する
前述の通り、午前Ⅰ試験は午前Ⅱ以降の試験と違ってプロジェクトマネージャーに関する知識に限らずシステム開発全般の知識が問われるので、午後Ⅱ以降の試験と対策を両立させるのが難しいです。免除を受けるためにあらかじめ応用情報技術者試験に合格することをおすすめします。
事情があってプロジェクトマネージャー試験で午前Ⅰを受けなければならない方は、応用情報技術者試験ドットコムの過去問道場で対策しましょう。
この過去問道場で直近10回分(過去5年分)を100%正解できるようになるまで、繰り返し解いてください。(古い年度の問題は出題傾向の変化により出題される可能性が低くなるため。)
午前Ⅱ
②参考書の午前Ⅱ範囲を1周する
まず、参考書で午前Ⅱの範囲を1周します。参考書には過去問だけではなくプロジェクトマネージメントに関する知識も整理されていますので、内容を理解・暗記しながら進めていきます。
プロジェクトマネージャー試験の参考書はたくさん種類がありますので、実際に書店で確認してみて自分に合ったものを選ぶと良いでしょう。私は定番そうな以下の参考書を選びました。
『令和03年 プロジェクトマネージャ合格教本 (情報処理技術者試験)』
③プロジェクトマネージャー試験ドットコムで過去問を繰り返し解く
参考書で午前Ⅱ範囲を1周した後は、プロジェクトマネージャー試験ドットコムの過去問道場で過去問を繰り返し解きましょう。このサイトでは試験回を指定して解いたり、分野を指定して解いたり、間違えた問題に絞って解いたりすることができます。解説付きなので間違えた問題を調べる手間もかかりません。
この過去問道場で掲載されている過去問全てを100%正解できるようになるまで、繰り返し解いてください。
過去問を解くうちに出てきた馴染みのない用語は、ググって意味を調べてメモしておきましょう。プロジェクトマネジメント手法は常に進化し続けているので、応用情報技術者試験でも新しい用語の意味を問う問題が出題される可能性があります。(数年前から一般的になっているアジャイル開発等)
午後Ⅰ
④参考書の午後Ⅰ範囲を1周する
参考書の午後Ⅰ範囲を1周しましょう。(先ほど私が紹介した参考書は過去問が掲載されています。参考書を購入しない方はプロジェクトマネージャー試験ドットコムに掲載されている過去問を使用してください。)
1周する際には、実際に時間を測って問題を解くようにしてください。午後Ⅰでは90分間で選択した2題を解くので、1題にかけられる時間は45分です。45分以内に解けるように問題を解いていってください。
出題される問題のほとんどは字数制限付きの記述問題です。問題文中にヒントが書かれていますので、その内容を組み合わせて(もしくはそのまま書き出して)答えを作るようにしてください。答えはいきなり回答用紙に書くのではなく、問題用紙にメモして字数を確認してからなるべく綺麗な字で回答用紙に書き写すと良いでしょう。
参考書を1周したら間違えた問題をメモしておき、試験前に確認すると良いと思います。
午後Ⅱ
⑤参考書の午後Ⅱ範囲を確認し、自分の対策答案を作成する
参考書の午後Ⅱ範囲を確認しましょう。私が先ほど紹介した参考書には午後Ⅱ問題の過去問がたくさん掲載されていますが全ての問題を解くのは時間的に難しく、また多くの問題を解く意味もあまりないと考えられるため、過去問は問題の解き方をイメージするために使います。
午後Ⅱでは出題される2題から1題を選択して回答しますが、この1題には設問が3つあります。出題される設問について以下の表にまとめました。(標準字数は設問ア以外、制限字数の中間を取っています。)
標準字数 | 制限字数 | 設問傾向 | |
---|---|---|---|
設問ア | 800字 | 800字以内 | プロジェクトの特徴・課題、自身の役割 |
設問イ | 1,200字 | 800〜1600字 | 課題への対策、自身で工夫した点 |
設問ウ | 800字 | 600字〜1,200字 | 対策の結果・評価、今後の動き |
合計 | 2,800字 | 2,200字〜3,600字 | ー |
自身の参画したプロジェクトの内容が頭に入っていても、試験本番でプロジェクト内容を整理していきなり2,800字を書くのはなかなか難しいと思います。原稿用紙(できれば参考書に付随している本番と同様の解答用紙)を用意して実際に手書きで制限時間内に2,800字を書き上げる準備をしておきましょう。そして採点者の印象が良いように、字はなるべく丁寧に書けるようにしておきましょう。
論述の対象とするプロジェクトについては自分の参画したプロジェクトが一番書きやすいかと思いますが、プロジェクトで特に課題など起きずに過ごしてきた方は参考書に記載の模範解答を参考に、課題が起きたことにして論述しましょう。
また、論述の対象とするプロジェクトは早い段階で一つに絞り、そのプロジェクトについて2,800字書き上げる作業を2〜3回繰り返しておいてください。課題と対応方法は出題されるテーマによって多少合わせる必要がありますので、このテーマが来たらこんな書き方にする、というように決めておく余裕があれば安心です。
対策スケジュール
2ヶ月前から試験対策を始めた場合の勉強スケジュールは以下のようになります。(2ヶ月を8週間だとしてスケジュールを立てています。)
【午前Ⅰ】
①免除を受けるため、あらかじめ応用情報技術者試験に合格する→免除する前提
【午前Ⅱ】
②参考書の午前Ⅱ範囲を1周する→2週間
③プロジェクトマネージャー試験ドットコムで過去問を繰り返し解く→1週間
【午後Ⅰ】
④参考書の午後Ⅰ範囲を1周する→2週間
【午後Ⅱ】
⑤参考書の午後Ⅱ範囲を確認し、自分の対策答案を作成する→3週間
参考:私の合格体験談
参考として私の合格体験談を書きます。
受験の背景
ITコンサルタントとして働いており、プロジェクトマネジメントの役割が必要とされるプロジェクトにアサインされました。プロジェクトマネジメント手法は定型化されており仕事を進める上では特に問題となるようなことも起きませんでしたが、自分が作業をする中で無駄だと思えるような進捗管理やドキュメント管理がありました。
プロジェクトマネージャー試験を通してプロジェクトマネジメント手法を体系的に学ぶことで、仕事でやっているプロジェクトマネジメントの作業の意味について再考したいと思いました。
合格までのスケジュール・結果
他記事で書こうと思っていますが、2021年4月にITストラテジスト試験を受験し、午後Ⅱの評価が足りずに落ちているので、高度情報処理技術者試験の試験構成・勉強方法についてある程度の知見はありました。
2021年10月の試験を申し込み、2021年8月あたりに参考書を購入し対策を始めました。おすすめの勉強方法として記載した方法で2ヶ月程度勉強をし、合格することができました。
合格時の成績は以下になります。
午前Ⅰ:免除
午前Ⅱ:84点
午後Ⅰ:72点
午後Ⅱ:ランクA
午後Ⅱ試験は論述が制限時間の2分前に書き終わるぐらいギリギリまで書いていましたが、なんとか十分な字数で回答用紙を埋めることができました。腱鞘炎になるかと思ったので、もう論述試験は受けたくないです。。。
さいごに
プロジェクトマネージャー試験は、プロジェクトマネジメントの基本的な考え方や手法を学ぶにはとても良い資格です。
ただし、他の高度情報処理技術者試験にも言えることですが、午後Ⅱの論述試験を手書きにしてしまっているために、時代遅れの試験であるようなイメージがあります。今どき手書きで仕事しているIT系技術者なんているのでしょうか。試験の意義を保つためにも、試験方法を検討し直した方が良いと思います。
この記事の内容が参考になり、多くの方がプロジェクトマネージャー試験に合格してくださったら幸いです。